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L-DOPA療法成果の検討
シンポジウム「神経疾患と代謝」には祖父江逸郎助教授の司会のもとに3つの異なった主題が盛り込まれ,各主題それぞれ3つの報告があった.臨床医学の分野でもっとも一般的な興味をひくのは治療に関連した問題であろうが,これについては「1.Parkinsonism」で活発な発言が見られた.パーキンソン症候群の患者の錐体外路系にはドパミン含量が著しく低下し,これと関連してL-DOPA療法が現在注目の的になっていることは周知の通りであるが,葛谷らによればL-DOPAを投与した患者にはビタミンB6の欠乏が見られ,また,L-DOPA投与と同時に活性型B6 30mgを毎回投与するとL-DOPAによって軽快したパーキンソン症状が悪化する傾向が見られた.また実験的にもB6欠乏ラットが高いL-DOPA脳内取り込みを示すことがたしかめられ,B6と全身的なドパミン代謝との関連が示唆された.L-DOPA長期投与によって将来当然出現することが予想される副作用問題のひとつとなる可能性が考えられ,それとともに単純な副作用に対するのとは異なった意味での対策の困難さが予期される.
また,宇尾野らはL-DOPAが有効な興味ある家族性疾患を報告し,また現在行なわれているL-DOPA療法に言及して,脳内必要量をはるかに上まわる大量投与の危険性を指摘し,投与量を減じる方法(echono-mizer)の開発の必要性を説いた.一方,豊倉はL-DOPAの効果と病理学的な変化との関連を検討する必要性について発言したが,いずれもきわめて妥当な指摘と思われた.パーキンソン症候群の代謝障害の詳細はもちろんいまだ不明であるが,塚田らによって酵素系の障害レベルの推定が報告され,今後の研究の成果が待たれる.
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