臨時増刊特集 日常役立つ診療技術
診断篇
III.循環器系疾患の診断技術
8.直腸毛細管圧
井上 十四郎
1
,
森 容一郎
2
1慈大高橋内科
2慈大内科
pp.711-713
発行日 1970年5月20日
Published Date 1970/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203123
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肝硬変症,バンチ症候群において門脈圧の上昇することは以前より知られており,Gilbertらはこれらの疾患に門脈高血圧症Portal Hypertensionということばを使用している.
門脈の上昇は門脈系から肝を経て全身静脈系に至る経過中に,その狭窄ないし閉塞をきたし,循環抵抗の増大する結果として現われる.したがって閉塞部位によって肝内性・肝外性門脈高血圧症に分類される.従来,臨床的に門脈高血圧症を知る方法としては,副側血行路の発達,すなわち腹壁静脈怒張,食道静脈瘤の出現,痔核ならびに腹水貯溜,脾腫などによりこれを推測していた.ところがMall(1892年)が動物で門脈圧をはじめて測定して以来,人での門脈圧は多くは外科医により開腹時に直接測定され,肝硬変症,門脈閉塞症でその上昇が観察されている.その正常値は60-200mmH2Oで,200mmH2O以上では門脈高血圧症と診断してよいといわれる.近年また,肝静脈カテーテルを肝静脈に閉塞させて測定する閉塞肝細静脈圧は,一部の門脈閉塞症をのぞき門脈圧に近似することから臨床的に広く応用されている.しかしいずれも患者の負担,手技の煩雑な点ですべての患者に施行することは困難であり,また特殊な設備を有するところ以外では測定が困難である.
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