- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
心筋をおかす筋肉疾患
筋肉疾患には神経原性筋萎縮をきたすものと本来の筋肉疾患myopathyに大別でき,このうち特に心筋を侵襲するものとして,前者に属するFriedreich運動失調症,後者に属する進行性筋ジストロフィーと筋緊張を伴う筋ジストロフィーなどが代表にあげられる.これらの疾患においては骨格筋の障害が進展する経過中に心筋の変性,結合組織化が高率にみられ,臨床的に心電図における様々の変化,うっ血性心不全,ときに急死が起こる.最近の循環器学会で問題視される原発性心筋疾患primary myocardial disease(Mattinglyによる広義の解釈)の範疇に入れられるものである.
myopathyの炎症性のものとして,細菌,ウイルス,真菌,寄生虫などが特異的原因となり骨格筋と心筋を侵襲する場合があり,非特異性心筋炎の多発性筋炎,皮膚筋炎,さらに全身性エリテマトーデス,結節性動脈周囲炎などいわゆる膠原病に属するものも心障害をきたす.前者,すなわち特異性炎症に関して,Coxsackie B virus感染はBornholm病(pleurodynia)として筋肉痛をきたし,そのほか髄膜炎あるいは心外膜炎,心筋炎の原因となるものであり,旋毛虫病trichinosisは幼虫が骨格筋と同様心筋にも迷入し炎症を起こす.非特異性炎症に属する多発性筋炎,皮膚筋炎は皮膚が侵されるか否かが異なるのみで,骨格筋の炎症をきたす以外にしばしば心筋炎が起こり,心不全による死をみることがあり,全身性エリテマトーデスでは,皮膚・関節.筋を侵襲するとともにLibman-Sacks病と称される疣贅性心内膜炎が現われ,結節性動脈周囲炎は血管変化を介しておこる臓器障害のあらわれとして骨格筋,心筋がおかされる.
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.