内科専門医のための診断学・5
専門医のための肝機能検査
織田 敏次
1
1東大第1内科
pp.587-593
発行日 1970年5月10日
Published Date 1970/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203086
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パターン診断法の意義
肝機能検査法は,この50年間にほぼ250種を越えようとしている.Hijmans van den Bergh(1922)の反応が公表されたときには,これで肝の機能異常がすべて診断できるとさえ歓迎をうけたものらしい.しかし,事実はそれほど甘くはなかった.黄疸のない肝障害はないと信じられていた時代ならばともかく,肝炎といえども黄疸のない症例が少なくないと知らされてみれば,その無理は先刻すでにご承知のことである.血清ビリルビンの異常は肝機能異常の1つのパターンにすぎない.肝炎の流行があると,1人の黄疸患者の周囲には約3人の無黄疸患者が肝炎に罹患しているという.また血清肝炎の症例をみておれば,容易に理解できることであるが,顕性の黄疸は,血清のトランスアミナーゼ(GOT,GPT)が急性期のある時点で少なくとも約600単位を越すのでなければ,現われてこない.ときには800単位に達しながら,黄疸の出ない場合さえ経験する.とすれば,600単位以下の肝炎患者は,GOT,GPTに頼る以外診断の方法がないことになる.それだけに,GOT,GPTの意義が高く評価されることにもなる.1954年以来,これが肝細胞障害の診断に欠かすことのできない肝機能検査の1つとされているのもそのためである.しかし一方では,閉塞性肝障害や肝硬変の末期になるとGOTが150-200単位でもすでに黄疸が現われてくる.
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