Leading Article
高血圧症研究の進歩への期待
鴫谷 亮一
1
1群大内科
pp.1136-1137
発行日 1969年10月10日
Published Date 1969/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202836
- 有料閲覧
- 文献概要
学問的統一を欠く血圧測定法
本態性高血圧症はその真の原因が不明のままでありながら,その治療法は明らかに進歩し,その死亡率も著明に低下した特異な疾患である.しかもその頻度が高く,ことに本邦においては医師の指導的活動によって最も多数の人命と社会福祉に貢献し得る大切な分野でもある.本症が高血圧を主症状とすることは申すまでもないが,臨床的血圧測定法の真の理論が必ずしも解明されていないことも,ある意味では奇妙なことである.しかもその方法の学問的統一が今日に到るまで,国際的にも国内的にも確立されていないのも不思議なことに思われる.理論が不完全であればあるほどその手技の細部にわたる厳密な統一が必要である.
一方高血圧を主症状とする患者の中に相当数の症候性高血圧症がある.近年その診断法も次第に精密になって来たが,最終的には後腹膜気腹術,大動脈造影法,腎生検法など患者に対する負担の大きい,時に危険すらあり得る方法で決定しなくてはならない.しかもその装備の経済的,技術的面は全国的計画性をもって考えられなくてはならない.この辺にも今日の医学教育問題医療行政問題の重大な根がある.
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.