今月の主題 高血圧症—最近の動向と展望
診断
高血圧診断法の最近の進歩
田中 敏行
1
,
池田 正男
2
Toshiyuki TANAKA
1
,
Masao IKEDA
2
1国立循環器病センター病院・内科
2国立循環器病センター病院
pp.1684-1685
発行日 1980年11月10日
Published Date 1980/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216744
- 有料閲覧
- 文献概要
診断の基本方針
高血圧の診断の第1歩は,各種の検査法が発達した現在でも,血圧計により血圧を測定することに始まる.疫学調査は血圧値の連続的な分布を示しており,高血圧と正常血圧との区別は人為的にならざるを得ないが,WHO専門委員会報告1)では,収縮期圧で160mmHg以上,拡張期圧で95mmHg以上のいずれかを満たすものを高血圧と定義している.この場合,少なくとも3回の血圧測定に基づいて高血圧の診断を下すことに留意すべきである.しかし血圧は1日の内でも刻々と変化する,いわゆる日内変動を有し,また血圧計の普及に伴って家庭での血圧測定が次第に行われるようになるに従い,医師が診療施設で測定する血圧と家庭血圧とが必ずしも一致しない点が指摘されてきて,どの時点の,どのような環境の血圧値を高血圧の指標とするかという新たな問題が生じてきた.本号でも,このトピックに関する解説が行われている.
高血圧の診断にとって重要であるのは,血圧の高さのみでなく,患者の予後の判定,治療方針の決定などに密接に関連した,主要臓器障害の程度,すなわち重症度の評価である.この目的のため,いくつかの診断基準が提唱されているが,本邦ではWHO専門委員会報告1)の3病期に分ける分類と,東大3内科高血圧研究会の基準が広く使用されている.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.