EDITORIAL
慢性食中毒
重松 逸造
1
1国立公衆衛生院疫学部
pp.741
発行日 1969年7月10日
Published Date 1969/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202714
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食中毒というのは,本来,食品の摂取に起因する急激な中毒症状の発現に対して用いられたことばであろうが,最近の米ぬか油事件にみられる有機塩素中毒や,水俣病のメチル水銀中毒,イタイイタイ病のカドミウム中毒などは,微量の病因物質が飲食物を通じて比較的長期間体内に蓄積した結果中毒するに至ったと考えられるもので,これらを慢性食中毒とよんでみた.この種の中毒は,産業の発展に伴う自然食品の汚染,あるいは食品工業の発達による新化学物質の使用の機会が増加してきた今日,今後も発生が予想されるもので,その調査研究と対策の樹立は緊急を要するものと考えられる.
慢性食中毒はいったん発生すれば経過も長く,治療に手間どるため,一次的な予防,すなわち病因物質の除去に対策の重点がおかれねばならないことはいうまでもないが,被害を最小限度にくい止めるためには,早期発見ということも重要である.しかし従来の例でも,患者発生の当初は中毒に由来すると気づかれないことが多く,この点中毒発生の監視機構を根本的に再検討する必要があろう.具体的には医師や一般入に対する慢性食中毒のPR,情報処理機構の整備,有害食品発見のための検査システムの確立などを考慮すべきである.
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