救急診療
糖尿病昏睡
後藤 由夫
1
1東北大山形内科
pp.488-489
発行日 1969年5月10日
Published Date 1969/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202640
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糖尿病昏睡の種類とその原因
糖尿病患者が昏睡状態にあるときにはその原因を鑑別することが治療方針をきめるのに必要である.インスリンが極度に不足してケトシースになり,図1のようにして昏睡になる,普通いわれている糖尿病昏睡のほかに,ケトーシスのない昏睡も起こる.その1つは血糖が800mg%以上に上昇し,また血清Na値が高値となって血漿滲透圧が上昇するために起こるhyperosmolar nonke-totic diabetic comaといわれるものである.この昏睡がどうして起こるか明らかではないが,ケトーシスを伴う昏睡が若年者でやせ型のインスリン依存性糖尿病に多いのに対し,50歳以後の軽症例に起こり,しかも治療後にはインスリンなしでも糖尿病がよくコントロールされる.このほかにケトーシスを伴わない昏睡としてはlactic acidosisによるものがある.この場合には組織の酸素欠乏をきたす原因,たとえば薬剤(サルファ剤,サルチル酸剤,ビグアナイド剤など),循環障害,出血などが誘因となる.
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