ずいひつ
このごろの若い者は……
佐藤 昌康
1
1熊大生理学
pp.856-857
発行日 1968年7月10日
Published Date 1968/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202297
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新幹線の車中にて
熊本という地方都市に住んでいると仕事の都合で大阪・東京へ出かける機会が多い.九州から特急,新幹線乗継がずいぶん出ており便利になったとはいえ,やはり車中で費やす時間はなんとなく無聊をもてあますものである.そんな時同席した他人の話に聞くとはなしに耳を傾けていることがある.たいていの場合,見知らぬ他人の会話は記憶に残らず,週刊誌の座談会記事と同様その場だけで忘れてしまうことが多いが,ときになかなかおもしろい話にぶつかる.先般大阪から東京への新幹線の車中で同席した2人の人品いやしからぬかなり年輩の紳士の話も,後で述べるエピソードを思い出しておかしくなった.2人ともどこかの大学の理科系の教授らしく,盛んに現代の若い研究者気質について議論をしていたが,ついに若い研究者達は昔—つまりその2人が若かりしころという意味らしいが—ほど研究に苦労してはげむという態度に欠けているのではないかということで意見の一致をみ,たがいに自己の正当性を確かめあうことで満足したらしく,そのまま話はとぎれてしまった.そこで私はふとあるエピソードを思い出したというわけである.
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