痛み
鎮痛剤—開発過程と効果
清原 迪夫
1
1東大麻酔科
pp.521-524
発行日 1968年4月10日
Published Date 1968/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202188
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理想の鎮痛剤は?
患者をして,医師のもとに走らしめるのは,病気そのものというよりは,痛みである。たとえば咳,不眠,息ぎれなどの症候では,しばらくの間ようすをみたり忍んだりしているが,激しい痛みに襲われると,即刻治療をもとめてくる。これは痛みが耐えがたいものであり,一刻も早くしずめてほしい本能的な願望が,こうして痛みのある状態から逃がれさせようとするのである。激しい頭痛や坐骨神経痛では,さつそく医療をもとめてくるのに比べて,乳がん早期の婦人の場合,はじめ小さなしこりが触れたときには医師を訪ねない。その理由をたずねると,そのとき苦痛ではなかつたからであるという。
このように痛みを対症的にもしずめるということは,医師の当面した第一の問題である。この点からみると古来一貫してもつとも重要な医療品は鎮痛剤であつたし,歴史的にみても,阿片がキリスト以前から唯一の鎮痛剤であつて頻用されてきたことも肯ける。
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