特集 古い治療から新しい治療へ
制酸剤
増田 久之
1
1東北大内科
pp.44-48
発行日 1968年1月10日
Published Date 1968/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202057
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制酸剤は胃内で塩酸を中和,結合し,その作用を除去,抑制する薬剤である。制酸剤は昔から消化性潰瘍の治療に用いられていたが,近代医学でも潰瘍治療に最初に使用されたのは石灰水,マグネシウム塩,炭酸ソーダ,蒼鉛剤,牛乳などの制酸剤で,アルカリ療法の時代とよばれた。その後,潰瘍治療は飢餓療法の時代になつたが,1912年Sippyが持続的酸中和を提唱して以来,制酸剤がふたたび脚光をあび,重曹が主役に選ばれた。この持続的酸中和の治療概念はこんにちでも生きているが,重曹などの水溶性制酸剤は吸収されて酸塩基平衡を乱し,腎結石を生ずることなどの副作用と頻回投与の繁雑さが指摘され,しだいに非水溶性,持続性のものに代えられている。しかし重曹の臨床効果,速効性はなお広く賞用され,胃分泌抑制剤などと用いられている。
このような制酸剤は本来の目的での使用のほか,賦形剤,添加剤としても用いられ,もつとも頻用される薬剤の一つである。しかし後者の意味の使用に慣れて,制酸の目的の使用にさいしても,漠然と食後に他薬剤と併用投与され,十分な制酸効果の得られない場合が少なくない。それで制酸剤について検討を加え,合理的な使用法を考えることにしたい。
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