今月の表紙
便の脂肪染色
河合 忠
1
1日大臨床病理
pp.1282
発行日 1967年9月10日
Published Date 1967/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201909
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糞便中の脂肪は中性脂肪と脂肪酸からなり,脂肪酸の一部は腸内にあるカルシウムなどと結合して脂肪酸塩として存在する。正常人では中性脂肪と脂肪酸の割合は1:3であつて,約1cmの直径にぬりつけた便中に数滴の脂肪滴を認めるにすぎない。0.2%ズダンIVエタノール溶液を加えると中性脂肪のみがまず赤く染まり,つぎに氷醋酸1滴を加えて酸性にして泡だつ程度に加熱すると中性脂肪および脂肪酸塩は水解されて脂肪酸となり脂肪全体が赤く染まつてくる。したがって,加熱前と加熱後の脂肪滴のようすを観察すれば中性脂肪と脂肪酸との割合をおおよそ見当づけることができるわけである。膵外分泌機能低下によつてリパーゼの分泌が少ないと中性脂肪が主として増加し,腸吸収不全症候群や閉塞性黄疸では主として脂肪酸が増加する。
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