EDITORIAL
臨床と健康管理
秋山 房雄
1
1東大医学部成人保健学教室
pp.840
発行日 1967年6月10日
Published Date 1967/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201816
- 有料閲覧
- 文献概要
健康管理の重要性についてはいまさら述べるまでもない。わが国の健康管理はまず結核管理から始められ,輝かしい成果をおさめたが,つづいて循環器疾患,胃がんを中心とした消化器疾患,糖尿病に対する管理へと拡がつてきた。これらの疾患は,しのびよる疾患であり,その早期発見のためには,こちらから出向いての積極的な,そして定期的な健康診断の実施が要請される。早期発見,早期治療が医療の原則である以上,この領域は当然生まれるべき運命にあつたものといえよう。
健康管理の特徴はこれだけではない。臨床が病人から出発し,その対象が,その個人の疾病におかれるに対し,健康管理にあつては,集団から個人を考え,その対象はむしろ,健康におかれている。もちろん,この場合にあつても,病人の発生が看過されるわけではないが,そのよつてきたる背景に注目し,また,その集団における位置づけと意味づけとが行なわれる。また,集団のなかには発病にいたらない多くの不健康者がおり,これらの人たちの状況さらにいわゆる健康者とはどんな状態にあるのかといつた問題は,正常と異常との限界のはつきりしない慢性疾患にあつてはとくに重要であり,この研究はむしろ今後のたいせつな問題であつて,健康管理はこの領域においても重要な役割をなすものと思われる。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.