EDITORIAL
心臓神経症
前川 孫二郎
1
1京大・内科
pp.535
発行日 1967年4月10日
Published Date 1967/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201741
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心臓神経症はこんにちNCA(neurocirculatory asthenia)とよばれる。心臓の愁訴,心動悸や心臓痛ないし呼吸困難,ときにめまい発作や不眠,とくにストレスに抵抗が弱く容易に疲労,またmorning fatigueなどをもつからである。本症は100年の歴史をもつが,一般にその原因も病機も皆目不明だといわれる。愁訴は大げさだが,客観的所見をもたず,廃人同様になりうるが,生命には危険がない1)。したがつて多忙な医学は真剣にこれととりくむことが少なかつた。しかしこの医学における100年の孤児も昨今のすばらしい医学の進歩によつてやがて真摯なそして効果的な研究がなされるであろう。また社会はそれを希望するに違いない。本症は「兵隊心臓」として戦場で発見されたが,現在はつめたい戦場である文明社会で最多な疾患となりつつあるからである。
本症病機の究明上重要な医学の進歩は,交感作用の効果器官におけるαとβの受容体であろう。もちろん現在はまだ仮説の域を出ず,また実際はもつと複雑であるらしいが,この仮設は幾多の選択的受容体遮断剤,とくに純粋のβ遮断剤を合成し,心機能の分析に多大の貢献をしている2)。そしてNCAには,もちろんそれだけではないが,自律神経系の失調があることにまちがいない。しかし問題はこの失調の由来である。まず間脳,そして内分泌系,とくに甲状腺が問題になつた。しかし証拠はいまだ得られていない。
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