治療のポイント
乳幼児の化学療法
藤井 良知
1
1東大・小児科
pp.370-371
発行日 1967年3月10日
Published Date 1967/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201699
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化学療法の限界
感染症に対する治療法としての化学療法に限界があることは乳幼児の場合も成人と異ならない。いな一般抵抗力においてはなはだ劣るところのある年齢層だけにその限界はいつそう明らかに示され,乳幼児に対して化学療法を行なう場合はつねにこのことを認識して,種々の併用療法を行ない乳幼児の自然治癒力を助ける方向にもつてゆかなければ治療成績をあげることはできない。しかしそれは事実であるとしても化学療法の効果は他の併用療法と比較にならないほど大きく,これなくして小児期感染症を論ずることはほとんどできないほどである。
大学病院に入院する肺炎,膿胸患児の実数が化学療法時代にはいつて漸減するにもかかわらず入院肺炎患児の死亡率は変化しない理由を入院肺炎患児の質的の変化,すなわち戦後は先天奇形,未熟児,栄養失調児,下痢,悪性腫瘍,初めなんらかの抵抗性の減弱を伴う疾患に合併した重症肺炎患児の入院が増加した点にみいだして,化学療法の限界があり,これに対して特別の考慮をはらうべきことをすでに12年前に述べたことがある1)。
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