特集 尿糖
尿糖の症例
6.膵臓癌と糖尿および糖尿病
後藤 由夫
1
1東北大・山形内科
pp.203-205
発行日 1967年2月10日
Published Date 1967/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201660
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糖尿病と誤診した膵がんの症例
初めに糖尿病の症状にのみ注意し,腹部にひそむ膵がんを見逃がしたにがい経験について述べよう。
症例1.1962年10月,某医より糖尿病と思われるが今後の治療方針などにつき教示さ褥時にれたい旨の69歳の婦人が紹介された。5ヵ月前より糖尿病様症状が現われ入院治療中であるがうまくコントロールができないとのことであつた。栄養良好,身長151cm,体重58kg,空腹時血糖値226mg%で胸部,腹部に理学的に異常所見はみられない。Regular insulinの注射を指示し紹介医のもとで治療し,月に一度ずつ糖尿病外来で経過を観察することにした。しだいに血糖値は下がり132mg%となり体重も増したので,レンテインスリンに変えることにした。6カ月後には相当に改善したが,ほぼ1年経過したころから姿を見せなくなつた。それから5ヵ月後に主治医よりがん性腹膜炎で死亡したとの報告を受けた。剖検しなかつたので正確なことはわからないが臨床経過からみていちばん考えられるのは膵がんである。
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