私の意見
医師の待遇についての一試案
柏崎 昭
1
1社会保険城東病院
pp.994
発行日 1966年7月10日
Published Date 1966/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201389
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医療制度の混乱を解決するのに為政者たちは健保財政のたてなおしに狂奔している。しかしその原因の糾明なくしては,その成果も近くふたたび崩壊することは明らかであろう。貧困な財政で発足した国民皆保険制度と低医療費に由来する乱診,乱療がその原因となつているのは多くの人が認めることである。私はこの解決策の一つとして疾病予防に力をそそぐべきと考え,昨年春『医療の広場』に小文を投稿した。
医学が国家の福祉に結びつくには疾病予防,医療,社会復帰の三者がうまくかみ合わなければならない。医師の数もそれ相当要求されるし,その専門も高度のものが要求されるはずである。しかし現況では医療制度の中心は診療であり,社会復帰がやや軌道にのり,疾病予防についてはまだ一般的に関心がうすく,国家予算もまことに少額である。医療給付にのみ追われて,その対策に腐心して社会復帰・疾病予防面が遅れているのはまったく遺憾にたえない。われわれ医師にしても診療に時間をとられすぎるし,また,経済的余裕もないので積極的に努力しないのが現在の状況であろう。病院にしても医療の給付によつて独立採算のもとで経営されているかぎり,給付の対象にならない他の面についてはあまり積極的に動かないのもよく理解できる。あれこれと考えてみると結局,日本の医学が現在では福祉事業面からみて,まだ不十分であるといわざるをえない。
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