特集 蛋白尿
蛋白尿—その発生機序と考えかた
阿部 裕
1
1阪大内科
pp.789-793
発行日 1966年6月10日
Published Date 1966/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201331
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まえがき
1694年Dekkersの蛋白尿発見以来,日常臨床上蛋白尿と腎疾患の関係は密接不可分のものとして重要視されてきた。ことに近年各種腎機能検査および腎生検など臨床検査法の進歩を見る以前では,蛋白尿検出が腎疾患診断上唯一の根拠であり,尿蛋白陽性ならばただちに「腎臓が悪い」と結論をくだした時代さえあつた。このような直線的な考えかたが正しくないのはいうまでもないが,反面,尿蛋白検査は腎機能検査などの新らしい臨床検査にない診断上の価値をもつことは現在でも変わりない事実である。このことは蛋白尿の証明法が非常に簡単であり実地医家にとつてももつとも容易に行ないうる臨床検査であることと相まつて,その価値をいつそう高めるものと考えられる。
一方,蛋白尿の成因に関する研究も古くから活発に行なわれ,882年Hoffmanらは,尿蛋白にalbuminのほかglobulinが存在することを証明し,さらに尿蛋白A/G比が原因疾患によつて異なることを明らかにしている。1937年にはTiseliusが電気泳動装置を改良,考案して,蛋白分画測定法を確立したが,1948年Wielandの考案した濾紙電気泳動法にいたつて,極微量蛋白試料からすぐれた蛋白分画像を得ることが可能となつた。一方稀薄濃度の蛋白試料の濃縮法が改良されて,各種腎疾患の尿はもちろん,正常人尿蛋白の研究も可能になつた。
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