メディチーナジャーナル 内分泌
甲状腺機能亢進症の原因—臨床例を中心とした議論
入江 実
1
1東大・中尾内科
pp.453
発行日 1965年3月10日
Published Date 1965/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200758
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甲状腺機能亢進症の原因に関して従来種々の説があるが,その中でもつとも魅力的なものは,下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモン(Thyroid Stimulating Hormone,TSH)が増加して甲状腺が刺激されそのために甲状腺ホルモンの合成,分泌が増加するという考えであつた。またTSH粗液には眼球突出を起こさせる物質(ExophthalmosProducing Substance,EPS)が存在するということで眼球突出もTSHの分泌増加によつて説明できるのではなはだ好都合であつた。ところが血中のTSHを測定してみると甲状腺機能亢進症で増加しているという事実は少しもみつからなかつた。むしろその副産物としてニュージーランドのAdams,Purves次いでアメリカでMcKenzieは動物でTSH測定を行なつた際,甲状腺機能亢進症の血中には普通のTSHと似ているが,もつと長い作用をもつ物質のあることを発見した。すなわちあらかじめ動物にI131を投与して甲状腺ホルモンをラベルしておいて被検物を注射し,動物血中に出てくるI131をカウントすると,通常のTSHは初期にI131放出が増加するのに甲状腺機能亢進症患者血清を注射した場合には,その増加がずつとあとになつて起こるということであつた。
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