特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
V.内分泌系
1.甲状腺疾患の診かた
見のがされている甲状腺機能亢進症
入江 実
1
1東邦大第1内科
pp.1135-1137
発行日 1972年7月5日
Published Date 1972/7/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204229
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意外に見落としと誤診の多い本症
甲状腺機能亢進症の診断は比較的やさしいと考える人が多いのではないかと思う.たしかに教科書的な,典型的な臨床症状,すなわち①甲状腺の腫大,②動悸,発汗,ふるえ,やせなどで代表される甲状腺ホルモン過剰分泌による症状,③眼球突出その他の眼症状,の3つがそろっている場合には,診察にきた患者を一目みただけで,いわゆるBlickdiagnoseで診断をつけるにともできる.しかしこれらの症状は必ずしも全部出そろっているわけではない.甲状腺腫大も場合によっては大してめだたない場合があり,また注意してみないと甲状腺腫大を見落とすこともある.ホルモン過剰による症状も患者によっては著明でなく,漠然とした自覚症状のみを訴えることもあり,逆にある1つの症状だけがきわめて誇張された形で現われることもある.眼球突出は患者の半数以上において欠如するので,それがなくとも本症の診断を否定する根拠とはならない.ただし,眼球突出のない患者でも,大きく見開いた目,下を向かせた時に眼球結膜部が残るいわゆるグレーフェの症状などは存在しうる.今日の考えではこれらの症状は眼球突出とは原因を異にし,甲状腺ホルモン過剰に起因する眼瞼のスパスムスによると考えられているからである.
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