海外のシンポジウムから
ウイルス感染の化学療法について(Igor Tamm and Hans J.Eggers),他
森 皓祐
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1慶大・内科
pp.248
発行日 1965年2月10日
Published Date 1965/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200700
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近年,ウイルス感染症の化学療法という,大きな懸案に対し,二つの新しい発展がみられた。即ち,一つは,基礎実験の末,一部の化学物質が,人体に用いられて成功を納めたこと,他の一つは,ウイルスが,それ自身感染細胞中で,その種のウイルスの繁殖を促すような物質(Viralgenetic material)の産生に関与する酵素を作るという事実の発見である。
かかるViral gonetic materialあるいはその合成酵素などは,化学物質によるウィルス絶滅の場合最も狙い易い的となる。目下の所,多くのウイルスに対しては,これを選択的に殺滅する物質はない。将来,分子化学がさらに進んで,ウイルスを構成する分子の中の,ある活性部位と結合して,その生命を阻止するような化学物質が出現することが望まれる。ウィルスにおいても既に薬剤耐性が認められ始めたが,交差耐性現象は殆どみられず,また数種物質による相乗効果もあり,細菌の場合ほど問題とはならないようである。 これからの微生物学は,単なる生化学の域を越えた,原子物理,分子化学の時代に入りつつあるが,かかる研究に当つては,医学部と,他の理化系教室とのより緊密な連けいが切望される所である。
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