臨床検査の盲点
小児の肺活量予測値の求め方
関原 敏郎
1
1慶大笹本内科
pp.1180
発行日 1964年11月10日
Published Date 1964/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200555
- 有料閲覧
- 文献概要
今月も肺活量についてもう少し考えてみましよう。先月はBaldwinの予測式を用いて肺活量を求めたわけですが,Baldwinの式は前回も解説したとおり,年齢と身長の函数です。わが国でもたとえば船津ら,金上ら,横山らによつて,それぞれ健常者の肺活量を求める実験式が発表されていますが,いずれも年齢,身長の函数となつています。しかも(年齢を含む項)×身長という型式ですので,共通項の身長を除外して考えてみますと,年齢が減少するにしたがつて肺活量の減少する減少率は各実験式によつてかなりの差があり,実際上小児,学齢児などではこの差が原因となつて,求めた肺活量に差異が生じてきます。そこで金上らの式では肺活量の予測式を年齢別に3段階に分けて示しています。
このように幼小児の肺活量予測値の算出についてはなお問題がありますが,さらにもう一つ検査実施上の困難性もあります。学齢以下の小児についてとくにいえることですが,肺機能検査に必要な『被検者の協力』が得にくいことが非常な障害となつています。石田らによると,2歳から6歳までの幼児に肺機能検査を行なつてみると,とくに5歳以下の幼児では完全にスパイログラムのとれる児はほとんどなく,とくに呼気予備量ができないために,肺活量の測定がむずかしいようです。また検査のためのレスピロメーターも,小児の呼吸器の換気力学的特性のため,とくに力学的に注意して作られたものが必要でしよう。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.