症例 心電図をどう読むか
心電図CPC
和田 敬
1,2
1久留米大学内科
2大脇病院
pp.884-888
発行日 1964年9月10日
Published Date 1964/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200471
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左室の負担はあるが
この心電図を一目みて気がつくのは,胸部誘導のV4からV7にかけて,高くしかも尖つたT波があることです。このT波がくせものでこの心電図の重要な点を占めているものと思われます。T波は尖つて高いのですが,QRS群もやはり高くなつています。一般に胸部誘導でV5またはV6のR波の高さが26mm以上か,あるいはV1のS波の深さが,これまた26mm以上であれば従来から左室肥大といわれています。このほかにもSV1とRV6の和が35mm以上ならば同じことがいわれています。この心電図ではV6のR波は単独で37mmもあり,SV1とRV6の和は優に50mmを超えています。したがつて,R波の高さまたはS波の深さを基にして考えれば,この症例ではいわゆる左室肥大があるもようです。しかしR波やS波はやせた患者や,子どもでは,左室肥大がなくとも高くなつたり深くなつたりしますから,R波,S波だけでは,左室肥大を断定できかねます。では心室の興奮に要する時間を測つてみましよう。それにはV5かV6が使用されます。これらの誘導でq波の始まりから,R波の頂点までに要する時間を一般に心室の興奮時間と考えています。
この症例ではだいたい0.04秒で,正常値内です。R波の高さからでは左室肥大,しかし,興奮時間からでは正常。ではいつたい,どちらなのでしようか?
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