症例 心電図をどう読むか
心電図CPC
和田 敬
pp.105-108
発行日 1965年1月10日
Published Date 1965/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200659
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STの変動があるが
この症例の特長は,STに変動があることです。すなわちV2〜V3のSTは上昇し,II,III,aVFのSTは下降し,V6あたりでもSTは多少下降しているようです。そこでこの場合のように,一つの症例でSTの上昇ならびに下降があるならば,そのどちらを重要視すかということが大切になつてきます。ご承知のように,STの変動は,心筋あるいは心膜が傷害状態(state of injury)といい,一番最初におこる虚血状態(state of ischemia)よりもう一歩進んだ場合に現われると考えられています。すなわち心筋や心膜が侵されて傷害状態になつた場合,この傷害部をまともに見るような位置におかれた誘導ではSTの上昇がみられるものとされています。つまりこのSTの上昇が一次的のSTの変化といわれるものです。したがつて,心電図のある誘導でSTの上昇があるならば,その誘導の真下にある心臓の表面が傷害状態にあると考えられるわけです。ではSTの下降とはどんな意味をもつのでしようか?このSTの下降は一般にSTの上昇に伴う従属的なものと考えられています。すなわち,心筋・心膜が傷害状態になつた場合,その傷害部位をまともにみる誘導ではSTの上昇が現われますが,もし,傷害部位の裏側で波型を撮るならばどうなるかというのが問題です。なぜ傷害部位の裏側での波型が大切になるかは,心臓の形を考えることでわかつていただけると思います。
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