症例
心身相関の気管支喘息
吾郷 晋浩
1
,
本田 竜城
1
,
草野 忠良
1
,
杉田 峰康
1
1九大医学部心療内科
pp.876-879
発行日 1964年9月10日
Published Date 1964/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200467
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はじめに
気管支喘息は,臨床的にアレルギー性,感染性,心因性の3つに分けて検討されることが多い。しかし,実際問題としては個々の症例がただ一つの要因によつて起こつている場合は少なく,幾つかの要因がかさなり合つていわゆる喘息準備状態ができ,そのうえに引き金(trigger)となるものが加わつて発症すると考えるのが妥当とされている。
一般に,アレルギー反応またはアレルギー様反応は先天性の素質(Allergische Diathese)あるいは後天性の素因(Allergische Disposition)という症状発現の場があつて起こるとされ,この場の形成には自律神経系,内分泌系の関与がきわめて大きいと考えられている。一方,情動による心理生理学的反応(psychophysiological reaction)のおもなる経路は自律神経系,内分泌系であり,この意味においても情動が喘息準備状態の形成や発作の引き金として関与しうることは十分に考えられるところである。本症における精神身体医学の立場はここにあり,問題は「心因性」か「アレルギー性」かというようなeither-orの結論を導こうとすることではなく,これらの多元的な因子の比重を正しく評価するところにある。したがつてアレルギー性の要因が大きいからといつて心因性について考慮しなくてよいということにはならない。
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