書評
胃の病理形態学
浅香 正博
1
1北海道大学第3内科
pp.971
発行日 2004年6月10日
Published Date 2004/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107496
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滝澤先生の書かれた『胃の病理形態学』には,今をときめく分子生物学的研究成果がどこにも記載されていない.都立駒込病院病理時代の豊富な症例1例1例を丹念に観察した自分の目に全幅の信頼をおき,過去の文献を参照しながら考えをまとめる手法をとっている.古典的ではあるが,オーソドックスなやり方である.胃や腸疾患などの臨床病理学的研究は本来がretrospective studyなので,症例が他のどの施設より多く,また観察方法や解釈においてこれまでのどの報告をも凌駕しているとの確固とした自信がなければ,本にまとめる勇気などなかなか出るはずがない.
著者自身が序文のなかで述べているように,2001年ニューヨークにおける同時多発テロと2002年の同僚の突然の腫瘍死がこの本をまとめるきっかけとなっている.“人生には限りがあり,本を書くための残り時間は少ないということを教えてくれた事件と人の死であった”との並々ならぬ決意から出発したのである.
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