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研修医卒業試験
山本 和巳
1
1国民健康保険蘇陽病院内科
pp.554
発行日 2003年11月30日
Published Date 2003/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107438
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私が学生の頃から漠然と思い描いていた理想の医師像というものがありました.それは例えとして,「飛行機の中で急病人が出た際に,いかなる主訴でも自信をもって名乗りを上げられる医師」というものでした.言い換えれば,あらゆる救急疾患の初療ができるということです.専門性に対する興味がなかった研修医時代は,研修後に僻地勤務に出ることが決まっていたこともあり,多科ローテート研修の後に,1年間救急部専属の研修を積みました.救急での経験を重ねるにつれ,それなりの自信はついたものの,所詮研修医です.常に後ろ盾があって責任を半分しか負わないような環境ですので,自分の行った医療行為の成果や,医師であること自体に大きな喜びを感じることができずにいました.
研修医生活も終わりに近づき,私事ですが結婚することになり,大学時代の先輩に結婚式での余興をお願いしました.同士とともに演じられた寸劇は,救急医である私がサンフランシスコ行きの航空機内で急病人に遭遇するという設定でした.急病人の対処に右往左往する仮の私の姿をおもしろおかしく演じるのを見て,何も考えずに楽しみました.ところが,式の翌日に出発した新婚旅行で,サンフランシスコ行きの航空機内で本当に急病人に遭遇してしまったのです.なんとも偶然の成り行きと思いながら,私は求めに応じて医師として機内で診察を行いました.幸いにも大事ではありませんでしたが,それまで病院内でしか医師として振舞った経験がなかったこともあり,そのときの私の緊張と興奮はかなりのものでした.
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