特集 内科プライマリケアのための消化器診療Update
扉
上野 文昭
1
1大船中央病院
pp.1655
発行日 2015年9月10日
Published Date 2015/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402223689
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古くから臓器系統別診療が主流であったわが国の内科診療のなかで,特に消化器はその傾向が顕著でした.消化器臓器は数が多くそれぞれ機能も異なり,病態が炎症,腫瘍,形態異常,運動機能障害,免疫異常,代謝異常など様々で,診断法も検体検査,画像検査,機能検査と多岐にわたり,治療法も内科的治療,外科的手術だけでなくその中間の低侵襲治療などにわたるため,消化器を診るだけでも骨が折れるのに,他まで気にしていられないという切実な問題もありました.
最近は総合内科的なとらえ方で,患者全体の問題解決を図る手法に回帰しつつあります.これには類を見ない高齢化の影響が少なくありません.現在の患者の中心は高齢者,それも後期高齢者が占める割合が急増しています.一昔前だったら胃の腫瘍を診断して内視鏡で切除したり,抗ウイルス薬で肝炎ウイルスを排除したりすれば,よいアウトカムが期待できました.大腸がん検診でがんが見つかれば患者にとって意味のある成果と言えました.今はそうは行きません.高齢者は併存症があるのが当たり前,数種類の薬剤を服用し,生命予後もQOLも限定的ということもよくあります.消化器の病変・病態を治癒させることが患者アウトカムを改善するという保証はありません.患者に良かれと思って行った治療介入が,逆に健康寿命を短縮させる恐れすらあります.総合内科的な視点で患者をよく診て,患者の利益が期待できるような消化器診療をしなければならないわけです.
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