連載 Festina lente
「積ん読」三十年
佐藤 裕史
1
1慶應義塾大学医学部クリニカルリサーチセンター
pp.715
発行日 2012年4月10日
Published Date 2012/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105911
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本は嵩張るし重いし場所をふさぐ.「読みもしない癖に」という年来の非難に加えて,「電子書籍にすれば楽なのに」という新手の批判も加わり,「積ん読」は年々分が悪くなる.新しい情報ほど価値ありとされる自然科学領域では,なおさらそうであろう.
高校生のとき,地理や世界史,倫理社会など幅広く担当していた先生がBronowski & Mazlish:The Western Intellectual Tradition―From Leonardo to Hegel(Harper,初版1960年)を薦めた.内容も英語も高校生の歯が立つものではないのに,大学水準のこの本を薦めて知的好奇心と青年客気を煽るのがその先生ならではの教育法だったと今にして思うが,まんまとひっかかった私は,すぐに隣駅前の洋書店で買った.帰り道に頁を繰るくらいはしたが,以来三十年,日に焼け形も崩れたそのペーパーバックは結局一度も読まないままだった.
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