書評
―朔啓二郎 編―閉塞性動脈硬化症診療マスターブック
代田 浩之
1
1順天堂大学循環器内科
pp.728
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105191
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閉塞性動脈硬化症の頻度は世界で3,000万人を超えると考えられているが,わが国においての正確な疫学データは存在しない.しかしながら,世界に類を見ない超高齢社会を迎え,なおかつ糖尿病をはじめとする閉塞性動脈硬化症(ASO)あるいは末梢動脈疾患(PAD)のリスクファクターのepidemicを併せもったわが国においてのASO診療の重要性は急速に高まっているといえる.ASOは以前考えられていたほど単純な疾病ではない.その病型・重症度が多彩であるだけでなく,合併疾患も多彩である.しばしば冠動脈疾患を合併するが,ASOが併存すること自体がその患者の予後を大きく左右する.しかしながら,最近そのスクリーニングと診断プログラムは必ずしも十分に普及しているとは言えない.また,ある意味では冠動脈疾患より多くの治療選択があるにもかかわらず,その認識は必ずしも十分ではない.一方で多くの循環器専門施設がASOあるいはPAD症例の増加を実感し,この疾患への診療プログラムを充実させてきていることも事実である.しかしながら,これまで一般医や研修医を対象とし,ASOに特化した専門書は多くなかった.
今回発刊された閉塞性動脈硬化症診療マスターブックは福岡大学医学部心臓・血管内科講座主任教授の朔啓二郎先生編集でわが国を代表するASOおよびPADの専門医が各章を担当し,わかりやすく実践的にそしてコンパクトにまとめられている.基本的事項から最先端のエビデンスおよび治療までを網羅して,研修医から循環器専門医まで十分に対応してくれる.ぜひ手元において活用してもらいたい一冊である.
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