病理との付き合い方 明日から使える病理の基本【実践編】 11
泌尿器―前立腺
小山 徹也
1
,
神原 常仁
2
,
深堀 能立
2
1獨協医科大学病理学
2獨協医科大学泌尿器科
pp.2087-2092
発行日 2006年12月10日
Published Date 2006/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101452
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前立腺癌の増加が著しい.米国においては前立腺癌の罹患率は男性の罹る癌の第1位を占めているが,本邦においては米国の1/10程度と現時点では少ない.しかし,2005年度版がんの統計によると,前立腺癌の年齢調整罹患率の予測では,2020年には結腸癌を抜き第3位となる勢いである.その原因はいろいろあるが,高齢化,食生活の変化,さらにPSA(prostate specific antigen;前立腺特異抗原)検診の普及による早期癌の発見の増加などが考えられる.前立腺癌はホルモン反応性増殖の性格を有する比較的予後の良い癌であり,ホルモン療法,内部ないし外部からの放射線療法,外科手術およびその組み合わせによるさまざまな治療法がある.このほか,watchful waitingと呼ばれる無治療経過観察や温熱/冷凍療法などもある.治療方針の選択に,病理診断が深くかかわっている.特に癌であるか否かではなく,「どんな種類の腺癌なのか」という病理学的因子が重要である.特に近年ではGleason分類に基づく病理組織分類が基本とされる傾向がある.
本稿の目的は病理と臨床医師をつなぐメッセージとして企画された.前立腺の検査の概略とそのなかで針生検が選択される場合について,泌尿器科医側から解説し,病理学的にどんな情報がほしいのかまず述べる.それに呼応するように,実際獨協医科大学病院で行われている針生検の方法と依頼票の書き方,報告のしかたについても言及しながら,病理側からGleason分類を中心とした診断の解説を行う.病理と泌尿器科,双方の円滑なコミュニケーションの手助けになればと考えている.
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