特集 臨床医必携 単純X線写真の読み方・使い方
胸部
肺結節と間違えやすい正常構造や病変―偽病変を作らないために
古村 慎二
1
,
黒崎 喜久
1
1順天堂大学医学部放射線医学講座
pp.118-123
発行日 2004年11月30日
Published Date 2004/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101196
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典型的な症例
正面像で,円形の結節(図a矢印)が右鎖骨のすぐ足側に見える.これに相当する陰影は側面像で肺内にはない.正面像を見直すと,この陰影は右側の第1肋骨と肋軟骨の結合部に重なって下方に突出している.側面像では,前胸壁から肺に向かって突出する半球状の陰影(図b矢印)がある.
この陰影の本体は第1肋軟骨の骨化である.第1肋骨との結合部の肋軟骨の骨化が強いと,この症例のように肺結節と紛らわしいことがある.第1肋軟骨との位置関係に気付けば,診断は正面像のみで容易である.ただし,右上葉の結節が正面像でこの部位にほぼ重なることもあるので,疑問が残る場合には側面像を追加して両者の鑑別を行うべきである.
肺癌の死亡者数は増加の一途をたどり,1998年には男女合わせた全体で癌死の第1位となった.撮影目的の如何を問わず,胸部単純X線写真の読影では肺癌を疑う陰影がないかどうか注意深い読影が要求される.各診療科の医師が胸部単純X線写真で肺結節を疑って胸部CT検査を依頼する症例のなかには,胸部単純X線写真のみで肺腫瘍以外のものであると診断できるものもある.不必要な放射線被曝を避ける観点からも,胸部単純X線写真で肺結節と間違えやすい病変や正常構造を理解しておくことは重要である.
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