特集 臨床医必携 単純X線写真の読み方・使い方
胸部
肺水腫―画像所見から読みとる肺の循環動態
酒井 文和
1
1東京都立駒込病院放射線科診断部
pp.72-78
発行日 2004年11月30日
Published Date 2004/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101191
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典型的な症例
慢性腎不全の増悪,呼吸困難,起座呼吸にて入院.立位胸部正面像では,心陰影の拡大(黒矢印)と上肺野の血管陰影の増強,右優位の肺門部近傍を中心とする浸潤影やすりガラス陰影(白矢印)がみられ,いわゆる蝶形分布を示している.このために肺門部の血管陰影の輪郭は不鮮明化している(hilar haze).また両側胸水による肋骨横隔膜角の鈍化(黒矢頭)と上下葉間の葉間胸水による陰影(白矢頭)がみられる.またいわゆるvascular pedicle width(両端矢印)は増大し,循環血液量の増加を示している.典型的なvolume overloadおよび心不全による心原性肺水腫の所見である.
肺水腫の診療における画像診断の役割は,その検出,肺水腫の病因の鑑別,肺水腫の程度の評価,経過や治療効果の評価,他疾患との鑑別などである.このためには,患者の臨床症状をよく把握することは必須である.またICUなどでは,ポータブル撮影などの条件の悪い単純撮影のみでの診断を迫られることも多く,ポータブル撮影写真によく慣れる必要があるとともに,単純撮影の限界もわきまえなければならない.さらにその病因の診断にあたっては,循環動態を把握することは重要であり,画像所見からもその症例の循環動態を表す指標を読みとり,肺水腫発生の病態生理まで遡って画像所見を解釈することが必要になる.
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