今月の主題 腹部疾患をエコーで診る
臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー
〈腹膜,大網,腸間膜〉
腹膜,大網,腸間膜
石田 秀明
1
,
小松田 智也
1
,
古川 佳代子
1
1秋田赤十字病院超音波センター
pp.278
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100986
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- 文献概要
腹膜,大網,腸間膜(以下集合的に用いる場合「これらの膜」と略す)はともに薄い線維性の膜で,病的肥厚がない限り,最近の高分解能装置でも超音波上一層の線状高エコーとしてのみ表現される程度で,詳細な観察は不可能である(図1).その結果,これらの膜は検査の際に無視されがちである.これらの膜の超音波診断能を向上させるためには,まずこれらの膜に興味をもつことから始まる.
具体的には,腹水(+)例を対象に高周波プローブを用い,前腹壁-腹水境界部の線状高エコー(腹膜)の状態を腹部全体にかけて観察する.胆癌患者では,ここに癌性小結節(腹膜癌症)がみられることがある.腹水(+)例ではさらに,胃大彎を起点とし,それから尾側に伸びる線状高エコー(大網)が各呼吸相で胃と歩調を合わせた動きをするのが観察される.また,腹水の存在は腸間膜自体の観察も可能にする.通常では,内臓脂肪高度沈着例(この場合は腸間膜が折り畳んだ布団様に描出される)を除くと,観察困難な腸間膜が腹水(+)例ではそのひだまで観察可能である.一般的に良性(非癌性)腹水では,腸間膜は薄く漂うように自由に動くが,悪性(癌性)腹水では,腸間膜は肥厚し塊状で動きは乏しい(図2).なお,これらの膜自体の疾患は,低頻度ではあるが,炎症性疾患から悪性腫瘍まで多種多様で,術前の質的診断は一般に困難で,悪性疾患の可能性が高いため,これらの膜由来の病変に対しては原則として外科的治療が適応される.
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