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肝良性腫瘍のなかで最も多い肝血管腫は,自覚症状がなく,スクリーニング検査や健康診断の超音波検査で初めて指摘されることが多い.肝以外にも発生し,組織上いくつかに分類されるが,肝ではほとんどが海綿状血管腫(cavernous hemangioma)である.腫瘍は,線維性隔壁からなる海綿状の形態を示し,症例により血栓,静脈炎,瘢痕化,硝子様変化,石灰化などを伴うことがあり,このため超音波像でも多彩な像を呈する.超音波像としては大きく,高エコー型,辺縁高エコー型(marginal strong echo),混合型の3型に分けられ(図1),形態学的には,境界は比較的明瞭で辺縁が凹凸不整の類円形の腫瘍として描出される.小さな血管腫は高エコー型が多く,腫瘍内にある無数の隔壁による多重反射により高エコーを呈するといわれている.肝腫瘍類似病変として扱われるvon Meyenburg's complexと呼ばれる胆管過誤腫も線維性結合組織内の不規則な小囊胞状の拡張胆管により高エコー腫瘤として描出されるが,血管腫よりも輝度がさらに高く,内部に胆管が小さな囊胞様変化として観察できることで鑑別可能である.このほかに鑑別診断としては,肝細胞癌,転移性肝癌,限局性の脂肪浸潤などが挙げられるが,確定診断に至るには血行動態も合わせた評価が必要となる.
超音波カラードプラ検査では,肝血管腫は多血性の腫瘍であるにもかかわらず,その流速が遅いために腫瘍内の血流表示を認めないことが多い.したがって,造影CTや血管造影でみられる特徴的な血行動態(斑状,綿花状濃染)は,超音波でも造影検査を行い経時的な変化を観察することで描出可能であり,十分確定診断となりうる.図2にB-modeのtissue harmonic imaging(CHA mode)による造影超音波検査の画像を呈示する.腫瘍の大きさやシャントの有無により腫瘍濃染の出現時間には幅があるが,腫瘍の周囲から中心に向かう斑状の濃染部が徐々に増加するのが特徴である.
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