今月の主題 腹部疾患をエコーで診る
症候からのアプローチ
下血
入江 健夫
1
,
宮本 幸夫
1
1東京慈恵会医科大学放射線医学
pp.191
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100909
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広義の下血は,消化管からの出血の存在を示し,上部消化管からの出血は主として黒色のタール様の排泄としてみられる.一方,下部消化管からの出血は主として暗赤色から鮮紅色の排泄として認められる.狭義の下血は,血液が消化管に長く停滞していることを示す暗赤色から黒褐色(タール様)を呈する場合を指し,通常は食道から大腸上部までの疾患によるものとされ,大腸下部からの鮮紅色を示す出血は血便と呼ばれ区別される.
原因疾患としては,食道静脈瘤,食道炎・食道潰瘍,Mallory-Weiss症候群,胃炎・急性胃粘膜病変,胃潰瘍,胃癌・胃肉腫,十二指腸潰瘍,小腸腫瘍,Meckel憩室,Crohn病,潰瘍性大腸炎,出血性腸炎,感染性腸炎,大腸憩室,大腸癌・ポリープ,腸重積,血管奇形などの消化管由来のほかに,重症肝疾患,感染症,血液疾患なども原因となる.緊急を要する消化管出血に対する検査としては,内視鏡検査,CT,消化管出血・Meckel憩室シンチグラフィ,血管造影などが主な適応となるが,超音波検査による腹部全体の検索も有用である.特に,消化管全般の壁肥厚の状態,腫瘤の存在の有無の確認が重要である(図1).消化管の進行癌では,全周性に肥厚した壁と腸内容物・ガスを反映してpseudokidney signと呼ばれる像を呈する.炎症やリンパ腫でも同様の形態を呈することがあるが,炎症などでは比較的平滑な壁肥厚を示すことが多い.小児の腸重積では粘血便を示すが,target signと呼ばれる重積した腸管が横断像で多重リング状に認められる像を示す(図2).
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