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糖尿病患者の足の観察では,浮腫の有無が重要である(図1).浮腫は,腎障害,肝障害や心不全で生じることはよく知られている.しかし,このような明らかな病態がなくても下肢の浮腫がみられることがよくある.食生活での塩分や水分の過剰摂取で起こることが最も多い.漬物や高濃度の塩分の食物摂取は当然であるが,味付けや保存食品の摂取,魚の摂取で起こることも多い.塩分の摂取と並行した水分の過剰摂取例は,寿司用の大きな湯飲み茶わんで1日何杯も摂取する例が少くない.高度の浮腫で入院した患者で上記障害がなく,病院食の摂取と安静で浮腫が軽減した例が散見される.浮腫は静水圧で生じる.1日長時間の立位作業者に多くみられる.朝より夕方浮腫が顕著になり,帰宅し睡眠をとると翌朝軽減して元に戻っている例が多い.糖尿病例では血管からの水分漏出が起こりやすく,立位で浮腫が増強される.糖尿病神経障害例での自律神経障害を生じると,足の火照りと浮腫の増加がみられる.交感神経障害で,皮膚の動脈・静脈吻合部調節障害による静脈への灌流血の増大がみられる.静脈の怒張と静脈圧が上昇する.糖尿病性腎障害の進展で,さらに浮腫が出現しやすい.
足の皮膚の色調の変化は,その原因が何であるか鑑別が困難なことがある.図2は第1,2足趾先端の赤色の斑がみられる.母趾は第2足趾に比して赤色の色調が濃厚である.局所の圧痛はなく,ほかに自覚症状の訴えがない.いつ頃から気がついたか? とか,気がついた以前の打撲や外傷の有無を聞くが,患者は特に困る様子もなく,原因もわからないという.ただ血糖が高値のため,運動療法として歩行を行っていたとのことである.そこで,その当時使用していた靴を持参させ,廊下歩行をさせ,その様子を観察した.前屈姿勢ですり足歩行,靴の甲での固定がない,靴の先端部が靴の先に当たった跡がみられた.運動による軽度の皮下出血で,圧迫での色調の退色がない(図3).衝突の度合いが第1,2足趾で異なったのは,足趾の長さが関与していた.
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