特集 提言—あすの公衆衛生
健やかな老いを支える保健婦活動
佐々木 順子
1
Junko SASAKI
1
1筑波大学社会医学系病院管理学
pp.12-15
発行日 1993年1月15日
Published Date 1993/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902929
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◆健やかに老いる時代
人生80年時代を迎え,「健やか」という響きのよい言葉が好んで使われるようになった.「健やかに老いる」というと,健康に老いるというより,ゆとりと豊かさを感じるのは私だけであろうか.江戸川区の「すこやか熟年課」,伊勢原市の「すこやかカード」また,健康だより「すこやか」等々,健康を疾病と対比させるのでなく,家族もしくは地域社会の人と人とのつながりの中で健康な充実した人生を送るといった意味が,「健やか」には含まれていると思う.80歳,90歳になっても身体に全く異常がないという人は極くまれである.多くの人々は,高血圧,糖尿病等の慢性疾患や,低下する身体の様々な機能や条件をもちながらも,それぞれに満足できる生活をすることができれば,「健やかに老いる」ことになるのではなかろうか.ルネ・デュボスは1),「人々が望む健康とは,必ずしも身体的な活力と健康感あふれた状態ではないし,単に長生きするだけのものではない.人々が毎日の生活で出会う様々なことに対して,一人ひとりが頑張って生きていこうという生き様の中にこそ,健康で幸せなくらしがある」と述べているが,まさに,こうした一人ひとりを大切にした生活の実現が,今求められているのである.
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