特集 ウイルス肝炎の疫学と予防
ウイルス肝炎の疫学—B型肝炎の疫学
樋口 庄市
1
,
小島 秀男
1
,
上村 朝輝
1
Shoichi HIGUCHI
1
,
Hideo KOJIMA
1
,
Tomoteru KAMIMURA
1
1新潟大学医学部第3内科学教室
pp.745-748
発行日 1990年11月15日
Published Date 1990/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902909
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■はじめに
B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって引き起こされる病態で,その感染様式には一過性感染と持続感染がある.一過性感染は免疫系が完成した後で感染を受けた場合に起こり,臨床的には急性肝炎の経過をとって50日前後で肝機能が正常化し,慢性の経過をたどることはない.しかし,肝炎を発症するとそのうちの約2%が広範な肝細胞障害が一時的に起こる劇症肝炎へと進展し,不幸な転帰をたどる場合もある.
一方,持続感染は臨床症状の有無を問わず,HBVの感染状態が持続する病態で,この病態の成立機序として,宿主のHBVの排除に関わる免疫応答の低下が想定されている.そして持続感染者のうち約10%は,程度の差はあれ,炎症が持続的に存在する慢性肝炎の状態となり,場合によっては肝硬変,肝癌へと進展する.
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