特集 改めて問う,保健事業はどれだけの成果をあげてきたか
成人歯科保健事業の成果と「健康日本21」の課題
新庄 文明
1
1長崎大学大学院医歯薬総合研究科健康予防科学講座(口腔保健管理学分野)
pp.499-503
発行日 2002年7月15日
Published Date 2002/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902766
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口腔保健の意義を反映した「健康日本21」の目標
齲蝕(むし歯)および歯周病に代表される歯科疾患は,歯の喪失による食生活や全身の健康に重大な影響を与えるだけでなく,会話や社会生活にも支障をきたし,豊かな人生の阻害要因ともなる.健康寿命を延ばすことを目的とする「健康日本21」戦略において,代表的な生活習慣病である「がん」「循環器疾患」「糖尿病」とあわせて「歯科疾患」が4番目の疾患として提示されたのは,健康習慣としての「運動」「栄養」「休養」ならびに危険因子としての「たばこ」「アルコール」と合わせて,「歯の健康」が食生活に起因する生活習慣病予防の重要な要素として位置付けられたからにほかならない.
「健康日本21」における「歯の健康」の目標としては,歯の喪失防止ならびに幼児期と学齢期の齲蝕予防および成人期の歯周病予防の各項目について,各ライフステージにおける達成目標値を設定するとともに,目標達成のための行動指針が提示されている.ここで歯の喪失防止が第一に掲げられているのは,平成元年以来「80歳まで20本の歯を」という8020運動の呼びかけがはじめられ,健康な長寿にとって歯科保健の役割の重要性についての認識が広がったことを反映している.
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