連載 公衆衛生のControversy
神経芽細胞腫のスクリーニングの是非
神経芽腫マススクリーニング事業は中止するべきである/神経芽細胞腫マススクリーニングの問題点
大島 明
1
1大阪府立成人病センター調査部
pp.304-305
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902496
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わが国では,がん予防の決め手は早期発見との考えが,臨床医,衛生行政の政策担当者や一般国民に広く行きわたっている.このため,6カ月児を対象とした神経芽腫マススクリーニング(以下,マス)も,他の成人を対象としたがん検診と同様に,早期発見が可能ということだけを根拠として,事前に死亡率減少の効果を確かめることなく,1985年以降公衆衛生施策として実施されてきた.1998年度には,104.2万人が受検し受検率は86.9%もの高さであった.しかし,今日では,マスが,偽陽性や偽陰性による害だけでなく,過剰診断・過剰治療による害を多くもたらしていることも明らかにされている.
最近まとめられた,小児がん学会神経芽腫委員会報告(小児がん36(1):107-113,1999)や厚生科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)久繁班「神経芽腫スクーリニングの評価」平成11年度報告書に示された後向きコホート研究には,神経芽腫罹患症例や死亡症例の把握が完全でないことと,受診・非受診の誤分類などの問題点があることを指摘しなければならない.両者で結論はくい違っているが,前者の報告に対する「問題点で最も重要な点は,神経芽腫患者数の完全な把握であると思われる.
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