連載 海外レポート ニューヨーク州保健省の日常・7
ニューヨーク州のがん登録制度
ホスラー 晃子
1,2
Akiko S. Hosler
1,2
1ニューヨーク州保健省慢性病疫学課
2ニューヨーク州立大学公衆衛生大病院
pp.504-506
発行日 2000年7月15日
Published Date 2000/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902333
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5月号では州が行っている定期健康調査を紹介したが,今回は州のがん登録制度(レジストリー)について触れてみたい.現在ニューヨーク州で組織的な登録制度があるのは,伝染性の高い急性疾患が大部分で,慢性病はわずかである.その慢性病の中で,がんの登録制度は歴史が一番古く,また近年連邦政府の政策の一環として規格の全国統一化が行われて,事業拡張した分野でもある.ニューヨーク州保健省では,オルバニー市にある本省内で,約50名の専門職員が,年間13万件に上るがん診断の登録とそれに関連した業務に携わっている.
がんはニューヨーク州民の死亡原因第2位の疾病で,その治療法には数々の進歩が認められているのにもかかわらず,原因やリスクなどまだ科学的に解明されていない点も多い.特に環境,食品,生活習慣とがんとの関係には多くの仮説が流布しており,その分野での研究を前進させるためには,広域にまたがる一般人口を対象としたがんのデータが不可欠である.州のがん登録はこのようながんの疫学的研究に,信頼できるデータを供給できる数少ない資源であり,また州のがんに関連した公衆衛生政策の情報源として欠かせない役割を持っている.こうした重要性から,がんの登録はニューヨーク州の場合任意ではなく,公衆衛生法で定められた罰則を伴う法定登録制度となっている.
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