特集 依存症の公衆衛生
地域におけるサポート体制—医療と保健の役割と機能
徳永 雅子
1
1世田谷区保健所
pp.98-101
発行日 1999年2月15日
Published Date 1999/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902028
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アルコール依存症の相談が始まった昭和50年代後半は,地域アルコール医療の黎明期である.それまでの保健所の体制は,家族や本人の相談は受けても精神病院か断酒会に振り分けるのが精一杯で,医療や福祉と連携するという考えや対応はなかった.世田谷区で相談が始まった58年以前の相談票を調べてみると年平均6〜7件の相談はあったが,どれもが保健婦かあるいは精神保健相談担当医が個別相談に応じているだけで,病院や断酒会を紹介すると相談関係は切れており,その後の対応や予後の把握も何もなかった.
それから15年が経過した.世田谷区の保健婦は依存症に取り組むことによって,精神保健に対する学びと対応に大きな変革をもたらすことができた.その一つがアルコール依存症の地域ケアネットワークシステムである.このネットワークは一朝一夕につくりあげることができるものではない.担当チームの協調と自己変革,そしてアルコール依存症への対応は精神保健の基礎であるという強い意思が引き継がれている結果である.地域でサポートシステムをつくるには受け皿が必要である.その中核はアディクション(酒害)相談になる.開設当初は“酒害相談”と標榜し,アルコール依存症を対象にして始まったが,今日では薬物依存やギャンブル,摂食障害などの嗜癖問題の相談へも対応するようになったので,その概念を取り入れて事業を実施している.
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