特集 エイズ対策の再検証—人権の視点から
輸血による感染症とインフォームドコンセント
前田 平生
1
1埼玉医科大学総合医療センター輸血部
pp.409-413
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901898
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この数年,血液事業,輸血医療は大きな変革期を迎えている.昭和50年ごろから始まり,60年ごろピークを迎えたアルブミンをはじめとする血漿分画製剤の使い過ぎ,そして時期を同じくして輸入凝固因子製剤によるHIV感染,さらに数百回に1回ではあるが致死的な輸血後GVH(graft-versus-host)病の発症,そして輸血患者の6人に1人が感染したといわれる非A非B型肝炎などわずか十数年前には驚くべき輸血の実体であったといわざるを得ない.このように,輸血医療は,大部分の患者が利益を受ける一方で,無視できない数の患者に副作用・合併症を与えてきた.現在,輸血の安全性は格段に高まったとはいえ,他人の血液を使用する限りにおいてその安全性の確保には限界がある.ここでは,輸血感染症について,献血の目的,献血者の責任と人権,輸血医療の現場でのインフォームドコンセントの視点から述べる.
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