連載 福祉部門で働く医師からの手紙
通園施設からのたより
本山 和徳
1
1長崎市障害福祉センター小児科
pp.426-427
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901707
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通園施設のこどもたち
私の勤める通園施設にはさくらんぼ園という名前が付いている.クラスを三つに分けている.パンダ組には自閉や多動,ゾウ組には精神発達遅滞,ウサギ組には重複障害の子どもたちが日々通ってきて保育や訓練を受けている.私は小児科医として習慣的に,被っている障害や診断をとおして彼らを見つめてしまう.しかし彼らの表情はどうだろう.そんな私を彼らは生き生きとした輝く澄んだ瞳で見つめてくれ,微笑んでくれる.そんな心からの信頼や親しみのこもった姿を目の当たりにするとき心打たれる思いがする.医療の場では診断をつけることから始まる.診断をすることは医師にとって大切なことであり,たとえ治療法がなかったにしても診断をすることで責任を果たしたと満足することもあるほどである.発達障害をきたす疾患のほとんどはしばしば有効な治療法のないことが多い.それらは染色体異常であったり先天性の脳奇型であったりする.また出生時の仮死のための低酸素性脳障害や出生後の脳炎,髄膜炎後遺症であったりして根本的には治す手段がないことが多い.かつての私は痙攣や腹痛,嘔吐,下痢,発熱などのために昼夜,病院を訪れる子どもたちの診療に明け暮れていた.
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