連載 福祉部門で働く医師からの手紙
通園施設からのたより
本山 和徳
1
1長崎市障害福祉センター小児科
pp.676-677
発行日 1997年9月15日
Published Date 1997/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901761
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診断を告げること
当通園施設,さくらんぼ園には併設された診療部門(ケースワーカー,小児科医,セラピスト,看護婦からなる)があり,保健所での発達健診や病院から療育目的で紹介された発達の心配される児の診療が日々なされている.ことばの遅れを主訴とするものが大半でありそれから運動発達の遅れ,多動や集団行動がとれないなどの行動異常の順に相談が多い.ことばの遅れの背景には様々の原因があり,したがってその予後も心配のいらない言語発達遅滞から自閉性障害や精神発達遅滞など発達が心配され早期療育の求められるものまである.親にとっては,ことばの遅れのみに気をとられ,原因となる発達障害に気づいていないことがあり,やがて診断を告知されることになる.親にとっては子どもの発達は喜びであり楽しみである.子どもの発達が思わしくないと大変な心配を抱かざるを得なく,診断を告げることは親においては大変ショッキングなことにもなり得るのである.安心してもらいたいのに逆に心配を抱かせてしまうことになる.受けた衝撃のあまり医師は時には親の心理的攻撃の標的になることもある.通園施設でみられる子どもに寄せる親の愛[青,笑顔それはいつもわれわれスタッフを支え,安心させてくれるものであるがその背景には確かに不安や,はがいさ,怒りがどこかにあるものである.自分の前にみられる親の様々な表情には子どもへの愛情と発達への不安が交錯している.
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