特集 ノーマライゼーションの実現へ
痴呆性高齢者からみたノーマライゼーション
三宅 貴夫
1
1弥栄(やさか)町国民健康保険病院
pp.402-403
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901702
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わが国の高齢社会のなかで痴呆性高齢者は確実に増加し,その現状に対しさまざまな対策が試みられ制度が導入されてきた.十数年前に痴呆性高齢者が社会問題化されたが,当初は痴呆性高齢者の対応が困難な「問題老人」ととらえられ,介護家族が痴呆性高齢者の「被害者」と見なされる傾向が強く,痴呆性高齢者をかかえる介護家族をどのように援助するかが痴呆性高齢者対策の視点であったといえるであろう.しかし,痴呆性高齢者への保健・医療・福祉での多様なかかわりやさまざまなケアを試みるなかで,痴呆性高齢者自身も痴呆という障害を持ちつつ困難な生活を強いられた個々の人間とみなされるように視点が変わってきた.例えば,当初は家族の介護の休養を目的として導入された老人ホームのショートステイやデイサービスセンターでの経験,あるいは老人病院,老人保健施設,老人ホームにおける介護の経験から痴呆性高齢者への適切な介護とふさわしい生活空間を整備することで痴呆性高齢者自身の精神機能の改善や情緒的に安定することが決して稀ではないことが理解されてきた.
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