調査報告
ベトナム障害児の実態調査—枯葉剤を浴びた北ベトナム帰還兵とその家族
洲濱 扶弥
1
1広島大学大学院医学系研究科保健学専攻修士課程・健康科学教室
pp.364-368
発行日 1997年5月15日
Published Date 1997/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901695
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インドシナ半島の東半分を,南北1,650キロにわたってS字状に位置するベトナム社会主義共和国(以下ベトナム)は,1976年に成立した国家で,90%をベトナム民族(キン族)が占めている.
1986年ドイモイ(刷新)政策が採択され,計画経済から市場経済への傾斜,国有体制から私有体制の容認により,急激な経済成長をとげた.1992年頃の日本のODA(政府開発援助)再開も経済発展の一要因となった1).この経済発展の恩恵も,国民の70%を占める農村部ではほとんどなく,都市部と農村部の経済格差の問題が生じ,戦争の傷跡も色濃く残っている.とくにベトナム戦争で散布された2)枯葉剤に含まれるダイオキシン(以下TCDD)の後遺症といわれる奇形児出生の問題は,ベトナム全体の実態把握ができず,資金不足のため原因の究明が進んでいない.また保健衛生や医療に関する,纏まった資料に乏しいのが現状である.このような中,藤本文朗教授(滋賀大学教育学部所属)を調査団長として「①ベトナム戦争に参戦し,枯葉剤を浴びた父親を介しての子供への影響.②障害児をかかえる農村部の家族の実態調査」を目的とする調査に加わり,障害児の実態と課題をまとめた.
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