特集 公衆衛生/予防医学と分子生物学
循環器疾患予防へのアプローチ—高血圧の分子疫学
羽田 明
1
1北海道大学医学部公衆衛生学
pp.837-839
発行日 1995年12月15日
Published Date 1995/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901389
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高血圧は虚血性心疾患,糖尿病,癌などとともに成人病と呼ばれている.成人病は,1)頻度が高い,2)遺伝素因が関与しているが,発症は成人期以降であることが多く,食事などの環境要因が大きく影響する.3)複数の遺伝要因,環境要因が存在する,などの特徴を有する.予防にはこれらの発症要因を明らかにすることが不可欠である.
本態性高血圧は原因不明の高血圧の総称であるが,これまでの研究により,塩分過剰摂取,肥満,飲酒,ストレスなどが,発症にかかわっていることはよく知られている.一方,遺伝疫学的研究から遺伝要因の関与も明らかであり,血圧決定に関与する割合は20-40%と推定されている1).しかし,単純なメンデル遺伝形式はとらず,ほかの成人病と同様,いわゆる多因子病に分類される.高血圧を発症しやすい遺伝素因保有者が,長年にわたる環境要因への暴露により発症すると考えられるため,原因遺伝子を同定することにより,遺伝素因保有者に対する個別的な予防医学が展開できる可能性がある.また,発症者の治療においても,遺伝的な原因によって最も有効な治療を選択できるかも知れない.本稿では,本態性高血圧の原因遺伝子同定に向けた研究の現状を概説する.
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