調査報告
在日外国人の医療問題—都立病院の受診実態から
杉山 章子
1,2
1東京都立荏原病院医療相談室
2前 都立豊島病院
pp.355-358
発行日 1995年5月15日
Published Date 1995/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901267
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はじめに
ここ数年,日本に入国する外国人は増加の一途をたどっている1)が,それに伴って生じる諸問題について,様々な論議が展開されている.医療の分野では,医療保障のない資格外滞在者の治療の困難さがかねてから問題とされてきたが,事態は改善されないまま深刻さを増している.外国人の増加だけでなく定着化の傾向が顕著となってきた現在,単に医療費の未払いといった経済的問題だけでなく,地域の公衆衛生に関係するような問題も生じている.滞在資格の有無にかかわらず,外国人が地域で生活している以上日本の社会と密接な関わりをもつことは当然であり,外国人の健康は今や日本人のそれと切り離して考えられない段階にきているといえるだろう.
都立豊島病院は,都内でも発展途上国の外国人労働者が多数居住している地域の一つに位置しており,アジア諸国を中心とした外国人の利用が多い.病院のある板橋区とその周辺の豊島区・北区・練馬区の4区に居住する外国人は,外国人登録をしている人だけでも平成3(1991)年には44,049人(東京23区全体の21%)にのぼり,その約80%がアジアの人々であった.特に板橋区は昭和62年から平成3年にかけて外国人登録者数が倍増しており,23区内で最も高い増加率を示している2),現実には,これに加えて,登録をしていない外国人が多数存在するものと思われる.
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